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懐古的日本文学

主に近代以降(明治・大正・昭和)の日本文学、大衆小説の紹介や勝手な分析と感想、その他人文社会学系の本の紹介も。

カテゴリー "エッセイ" の記事

「まだ東京で消耗してるの?」/イケダハヤト

「まだ東京で消耗してるの?」イケダハヤト



 とても挑発的なタイトルである。
 東京から家族で高知県の限界集落に移住したという著者のエッセイ。
見出しだけ見ても、
 「第一部・東京はもう終わっている」「なぜ東京は終わっているのか」「東京の受動的サラリーマンはこの先喰えなくなる」
 ・・・。

 そして文章も挑発的。

「まだ毎日残業して、東京のウサギ小屋に高い金払ってるの?」p.22

「僕はあなたが汗臭い満員電車で頑張って本を読んでいる時間に、誰もいない静かな部屋でのんびり日本酒を飲みながら本を読んでいるのです。」p.25

「真夏にスーツを着て汗だくになっている人たち。脱げばいいのに……。『暑けりゃ服を脱げばいい』ということは、幼児でも知ってますよ。」
「こういう人たちもまた、東京というシステムに勇気を去勢されているのでしょう」p.38


 田舎は教育環境が悪いのではないか?という質問に対して・・・
 「いいですね!時代遅れなその感じ!」p.116

 東京に住んでいる人はイラッとくるのではないか。

 著者の書き方は、東京という社会システムに飲み込まれて普通に生活している人や、東京を脱出できない人、そのシステムに押しつぶされていく人を上から見降ろしているようである。
 しかし悲しいかな、的を射ている指摘が多々ある上に、言い方もブラックユーモアがあって面白い。

 文章にイライラさせられる時点ですでに著者の手管に飲み込まれてしまっているのだろう。
著者は広告収入で生計を立てるブロガーなので、刺激的なことを書けば書くだけ、ブログにたくさん人が集まる。
とても良い奥さんがいるようなので本当は良い人なのかもしれない。

 実際に皮肉ばかりでなく、考えさせられる問題提起も多く述べられている。
 賃金に比しての東京の住宅のコスト問題、人口過密による通勤、渋滞、トイレ事情など。
 特に、著者の住むところの方が子供を周囲が見守り大事にする環境が整っているというのは、その通りなのだろう。
 
 すべてをうのみにするわけではないが、東京=最先端、最上級のまちという価値観は崩れ去っているのかもしれない。

 しかし、著者のようにネット環境さえあれば自分の技術で稼いでいける人にとっては移住はよいものなのだろうが・・・(このことは著者も述べている)

 ともあれ、東京生活に嫌気がさしたり疲れてきた人、またはもっとポジティブに、新しい場所で一から生活を作り上げたい人、何もないところからビジネスを立ち上げてみたい人など、様々な人に対する提案書となっている。

  東京で会社員として生きていくだけが、人生ではない。
  もっといろんな選択肢があるのではないか。もっと人生を自由に考えてみては?といった指南を与えてくれていると思う。

  第4部で、いろいろビジネスを立ち上げてみたいと、たくさん企画書(?)が書いてあるのだが、それが実行されつつあるのかどうかが気になる・・・

・引用文献:「「まだ東京で消耗してるの?」著:イケダハヤト 幻冬舎新書(2016)